Interview 2

非言語コミュニケーションの重要性と役割

コミュニケーションにおいて、視覚情報や聴覚情報といった「非言語コミュニケーション」はどのくらいの重要性を持ち、実際にどういった役割を果たせるのでしょうか。

人間のコミュニケーションは、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションで構成されている話をしたと思います。心理学的には言語のことをバーバル(verbal)と呼び、対する非言語はノンバーバル(non-verbal)になります。先程のメラビアンの法則を考慮すると、非言語コミュニケーションは全体の90%以上を占めているので、ものすごく重要な要素なんですよ。
コミュニケーションの場面で、我々はどのような非言語コミュニケーションをしているかというと、実は今座っている位置、角度、表情、身振り手振りというものが影響していることは容易に伝わりますよね。
最近は新型コロナウイルスの影響で、マスクをしてカウンセリングに来られる方がいらっしゃるし、同じくカウンセラーもマスクをするんですよね。そうすると「私、最近しんどいんです。」というそのしんどさの度合いが、表情から読み取りにくい・受け取りにくいという問題がある。
人の表情に含まれるコミュニケーションの情報はとても繊細なもので、専門家であればあるほどより重要視しています。

少し大げさな例を出してみましょう。私がとても困った表情をして、

「とても嬉しい。」

と言うと、なにか混乱しますよね。

どっちだろう?って感じますね。悲しい顔をしているのに言ってることは真逆、という。

本来、表情と感情は連動しているんです。竹中直人という俳優さんが、怒りながら笑う・笑いながら怒るという芸を披露しているんですけど、お互いの要素が相反すると、言語より非言語を重視することが多いので、あれ?ってなって非常に混乱をきたす。
現実的な視点で見ると「表情を変えない日本人」というフレーズがあります。民族的・世界的に見て日本人は表情をあまり変えないから、どういう風な感情を意図しているか分かりにくいと言われることが多いんです。
今のようにあからさまに矛盾しているとは言わないけれど、「今どんな気持ちですか?」と聞かれて「そうですね、とても嬉しいです。」と無表情で答える。ある種日本の国民性であり、美徳だったりします。

確かに日本人って割とリアクションが薄いですよね。

海外に行くと、わざとらしく見えるほどオーバーリアクションの人が多い。民族や人種の違いから、意図が伝わらないという経験をしているので、うまく伝わるよう印象の強いリアクションで振る舞う傾向があるんです。だから帰国子女だと、すごくオーバーリアクションに見られるんですよね。外国が世界標準だと思っているんです。

向こうでは普通でも、日本だと不自然に見られてしまいますね。

おっしゃる通りです。外国が世界標準、日本はむしろ少数派だというのが世界の理解だと思っています。
次は視覚情報だけでなく、音量や音圧、つまり聴覚情報についてお話しします。まず音量は、ソーン(sone)という単位を使ったりするんですけど、大きい方がより危険度が高い時に有効です。逆に言うと、安心感を与えたい場面で大きな声を使うと、相手は不安になりやすい、というのが心理学の実験からも分かっている。多分皆さんの経験上もそうだと思います。凄い大きな声の人がいると威圧感を感じて気持ちが落ち着かないですし、一方で「火事だ!」という危険な場面で「火事なんですって……あっち行っちゃダメですよ……」って小言で言われると不安になりますよね? なので音量は大事というのは例えの一つに言われます。
音にはもう一つ、音圧という要素があります。音圧はデシベル(dB)で表示されるんですけど、75dB以上になるとうるさいと感じる騒音に定義されていて、その騒音の中に入ると人は人を助けにくくなるということが分かっています。これは実際に実験されていて、倒れているお婆さんを「騒音でない状態」と「騒音の状態」で、人がどの程度の割合で助けるか? 結果としては有意な差がありました。音圧は音量以上に人の心理や行動に作用すると考察されています。危険な場面では、音を大きくするよりも声に張りを持たせた方が、危険度が伝わりやすいんです。
これも一つのコミュニケーション、特に非言語コミュニケーションにおいて重要視されている、聴覚情報の工夫の仕方ではないでしょうか。人の表情・身振り手振り・声のボリュームと張り、いずれもコミュニケーションを円滑にするために欠かせない重要な部分です。

ありがとうございました。(3へ続く→)

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